EC2 Instance Connect が ABAC (Attribute Based Access Control) に対応しました! [Alternative Ver.]
コンバンハ、千葉(幸)です。
ネタが被りましてね。
EC2 Instance Connect now supports Attribute Based Access Control (ABAC)
EIC が ABAC に対応した!という発表を受けていそいそとブログの下書きを書いていたのですが、颯爽とあおやぎがブログ化していました。(検証がとても丁寧......)
ほぼ書きあがっていたのでお蔵入りにするのも忍びないと思い、公開します。大筋はどちらも一緒なのですが、細かい部分で違いがあります。同一のソースからアウトプットするときにどこを切り取るかの観点の違いを比較したり、オリジナル・バージョンを楽しんだ後にちょっと別のバージョンも触れたい、という場合にご参照ください(?)
目次
- EIC (EC2 Instance Connect) とは
- ABAC (Attribute Based Access Control) とは
- EIC で ABAC がサポートされたとは
- やってみた
- 終わりに
EIC (EC2 Instance Connect) とは
EC2 Instance Connect とは、EC2インスタンスに対するSSH接続の手法の一つとして提供されている機能です。SSHキーの管理が不要になり、IAMを用いてアクセスコントロールが可能になります。また、接続リクエストがCloud Trailに記録されるというメリットもあります。
機能の詳細は以下のエントリに分かりやすくまとまっています。
同じくEC2インスタンスに接続するためのサービスとして、Systems Managerのセッションマネージャーがあります。
セッションマネージャーはEC2インスタンス以外にもオンプレミスのインスタンスにも使用できますが、EC2インスタンスに接続することを想定してEICと比較すると、ざっくり以下のような違いがあります。
EIC | セッションマネージャー | |
---|---|---|
SecuriryGroupインバウンド | SSH用の開放が必要 | SSH用の開放は不要 |
接続先インスタンスのパブリックIP | 必須(ブラウザアクセスの場合) | NAT GatewayやVPCエンドポイントを使用すれば不要 |
いわゆる「ログイン」の有無(※) | 有り | 無し |
セッションログのS3出力 | 不可 | 設定によって可能 |
対応OS | Amazon Linux2、Ubuntu 16.04 以降 | 多くのLinux、Windows |
接続先インスタンスのIAMロール | EIC用には不要 | セッションマネージャー用に必要 |
接続先OSにインストールが必要なもの | ec2-instance-connect パッケージ | AWS Systems Manager エージェント |
(※)いわゆる「ログイン」が何を指しているかについては、以下記事を参照してください。
また、EC2 Instance Connect の詳細については、以下ドキュメントを参照してください。
EC2 Instance Connect を使用して Linux インスタンスに接続する
ABAC (Attribute Based Access Control) とは
ABAC とは、簡単に言うと「タグベースでの権限管理ができること」を指します。特に、アクションの実行元であるプリンシパルと実行先であるリソースに同一のタグを付与することによってコントロールすることを指します。タグベースはともかくABACという言葉は聞いたことがなかったので調べると、AWSにおいては2019年11月に登場した考え方であるようです。
新しい ID フェデレーション – AWS でアクセスコントロールに従業員属性を使用する
イメージは、以下の通りです。
左側にスイッチ先のロール、右側に操作対象のリソース(S3バケット、EC2インスタンス)が描かれています。それぞれプロジェクトごとに、Heart(ハート)、Sun(太陽)、Lightning(稲妻)のタグが付与されています。
ここで、「自身が所属するプロジェクトのタグがついているリソースのみ操作可能」というアクセスコントロールをする場合、IAMポリシーを一つ定義するだけで実現できます。ロールが増えてもリソースが増えても、タグ付けさえきちんと行えば、IAMポリシーを変更する必要がありません。
それに対して従来の考え方はRBAC(Role Based Access Controll)と呼ばれ、こちらは「リソースベース」での権限管理を行います。
(画像引用元同上)
プロジェクトごとにロールを作成し、それぞれ個別のIAMポリシーを割り当てます。各ポリシーにおいては、リソースレベルで操作可能な対象を指定していきます。例えば「Heartプロジェクト用のロールではインスタンスAとS3バケットXを操作できる」といったものです。インスタンスやS3バケットが追加された場合、ポリシー内で定義されているリソースも併せて修正する必要があります。
ABAC か RBAC かで言えば、ABACの方が柔軟な管理に対応しているため、対応しているAWSサービス・機能については積極的にABACを採用する方が好ましいでしょう。
EIC で ABAC がサポートされたとは
ここまで学んだことを組み合わせると、ようやく意味が見えてきました。簡単に言えば、以下の制約が取り払われた、ということになります。
Instance Connect のタグベースの認証は現在サポートされていません。
2020/5/19現在の日本語版のドキュメントでは記述が確認できます。(英語版では既に更新されています。)
従来は、IAMユーザー(ないしロール)がどのインスタンスに対してSSHできるかどうかを制御したい場合、そのエンティティに割り当てるIAMポリシーを以下のように定義する必要がありました。
{ "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Effect": "Allow", "Action": "ec2-instance-connect:SendSSHPublicKey", "Resource": [ "arn:aws:ec2:region:account-id:instance/i-1234567890abcdef0", "arn:aws:ec2:region:account-id:instance/i-0598c7d356eba48d7" ], "Condition": { "StringEquals": { "ec2:osuser": "ami-username" } } }, { "Effect": "Allow", "Action": "ec2:DescribeInstances", "Resource": "*" } ] }
Resource
のセクションにおいて、EICによる接続を許可するリソースをインスタンスごとに定義しています。接続を許可したいインスタンスが増えた場合、都度ポリシーをメンテナンスしていく必要があります。これはリソースベースの考え方です。
今回のアップデートにより、以下のようなポリシーの書き方がサポートされました。
{ "Version":"2012-10-17", "Statement":[ { "Effect":"Allow", "Action":"ec2-instance-connect:SendSSHPublicKey", "Resource": "arn:aws:ec2:region:account-id:instance/*", "Condition":{ "StringEquals":{ "aws:ResourceTag/tag-key":"tag-value" } } }, { "Effect": "Allow", "Action": "ec2:DescribeInstances", "Resource": "*" } ] }
Resource
ではインスタンスを制限せず、Condition
におけるリソースタグによってコントロールしています。タグベースでの認証が可能になったため、条件として指定するタグキーと値の組み合わせを工夫することで、ABAC に対応することが可能になりました。
タグベースの認証?タグベースの認可?
上記ドキュメントでは「タグベースの認証」という表現が使われています。原文を確認すると、「tag-based authorization」であったことが分かります。
Documentation updates · awsdocs/amazon-ec2-user-guide@2a8a180
We currently do not support tag-based authorization for Instance Connect.
「認証と認可」という表現がされる時、それぞれ以下のような単語が割り当てられます。
- 認証:Authentication
- 認可:Authorization
原文の単語と、タグベースでアクセス許可をコントロールする、という働きを鑑みると、「タグベースの認可」という表現の方が適切そうですね。
やってみた
Project
タグ「Chiba
」をIAMユーザーとEC2インスタンスに付与し、同一の値を持つ組み合わせの場合のみEICによる接続を許可するような形を目指します。
EICによる接続には以下のオプションがありますが、今回はマネジメントコンソールからブラウザベースでの接続を行います。
- ブラウザベースのクライアントを使用した接続
- EC2 Instance Connect CLI を使用した接続
- 独自のキーと SSH クライアントを使用した接続
EC2インスタンスのセットアップ
EC2インスタンスをパブリックサブネットに作成します。今回は以下の条件で作成しました。
- amzn2-ami-hvm-2.0.20200406.0-x86_64-gp2 (ami-0f310fced6141e627)
- t3.micro
- パブリックIP有効化
- 東京リージョン
EICによるブラウザ経由での接続時には、特定のIPレンジからのSSHのインバウンドを許可する必要があります。
こちらのリストから、"service": "EC2_INSTANCE_CONNECT"
となっているIPプレフィックスを許可する必要があります。今回は東京リージョンで試すため、3.112.23.0/29
を許可しました。
ひとまずEICではなく通常の方法でSSH接続し、EICに必要となるec2-instance-connect
をインストールしようとしたところ、今回使用したAMIではすでにインストール済みでした。
[ec2-user@ip-192-168-0-233 ~]$ sudo yum install ec2-instance-connect 読み込んだプラグイン:extras_suggestions, langpacks, priorities, update-motd amzn2-core | 2.4 kB 00:00 パッケージ ec2-instance-connect-1.1-12.amzn2.noarch はインストール済みか最新バージョンです 何もしません [ec2-user@ip-192-168-0-233 ~]$
インストールした際に、eic_から始まる名称のファイルが作成されるようです。
[ec2-user@ip-192-168-0-233 ~]$ ls -l /opt/aws/bin 合計 36 lrwxrwxrwx 1 root root 45 4月 7 01:51 cfn-elect-cmd-leader -> ../apitools/cfn-init/bin/cfn-elect-cmd-leader lrwxrwxrwx 1 root root 41 4月 7 01:51 cfn-get-metadata -> ../apitools/cfn-init/bin/cfn-get-metadata lrwxrwxrwx 1 root root 32 4月 7 01:51 cfn-hup -> ../apitools/cfn-init/bin/cfn-hup lrwxrwxrwx 1 root root 33 4月 7 01:51 cfn-init -> ../apitools/cfn-init/bin/cfn-init lrwxrwxrwx 1 root root 43 4月 7 01:51 cfn-send-cmd-event -> ../apitools/cfn-init/bin/cfn-send-cmd-event lrwxrwxrwx 1 root root 44 4月 7 01:51 cfn-send-cmd-result -> ../apitools/cfn-init/bin/cfn-send-cmd-result lrwxrwxrwx 1 root root 35 4月 7 01:51 cfn-signal -> ../apitools/cfn-init/bin/cfn-signal lrwxrwxrwx 1 root root 21 4月 7 01:51 ec2-metadata -> /usr/bin/ec2-metadata -rwxr-xr-x 1 root root 6497 1月 16 00:31 eic_curl_authorized_keys -rwxr-xr-x 1 root root 7323 1月 16 00:31 eic_harvest_hostkeys -rwxr-xr-x 1 root root 15696 1月 16 00:31 eic_parse_authorized_keys -rwxr-xr-x 1 root root 823 1月 16 00:31 eic_run_authorized_keys
/etc/ssh/sshd_config
が以下の記述になっていれば、EICによる接続に対応しています。
[ec2-user@ip-192-168-0-233 ~]$ sudo cat /etc/ssh/sshd_config | grep AuthorizedKeysCommand AuthorizedKeysCommand /opt/aws/bin/eic_run_authorized_keys %u %f AuthorizedKeysCommandUser ec2-instance-connect
IAMユーザーのセットアップ
ブラウザによる接続を行うIAMユーザーを準備します。
IAMユーザーにアタッチするIAMポリシー「test-eic-policy」を作成し、以下の内容を定義します。
{ "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Effect": "Allow", "Action": "ec2-instance-connect:SendSSHPublicKey", "Resource": "arn:aws:ec2:ap-northeast-1:000000000000:instance/*", "Condition": { "StringEquals": { "aws:ResourceTag/Project": "${aws:PrincipalTag/Project}" } } }, { "Effect": "Allow", "Action": "ec2:DescribeInstances", "Resource": "*" } ] }
ハイライト部分の記述によって、「リソースに付与されているProjectタグの値とプリンシパル(ここではIAMユーザー)に付与されているProjectタグの値が同一であればAllow」という制御を実現しています。
上記のポリシーをアタッチし、Project
タグの値として「Chiba
」を付与したユーザー「Tes-EIC-User」を作成します。
EICによる接続
上記のユーザーでマネジメントコンソールにサインインし、EC2のインスタンス一覧画面に遷移します。
(参照用の権限はec2:DescribeInstances
しか付与していないため、一部の値が表示されないことに気付きました。知見。)対象のインスタンスにProject
タグ「Chiba
」が付与されていることを確認し、「接続」を押下します。
接続方法の中からEICを選択し、接続先ユーザー名を指定して「接続」を押下します。
このように接続ができます。
CloudTrailには以下のように記録されます。どのIAMユーザーがどのOSユーザーに対してEICによるSSH接続を実施したか、というのが記録に残るので管理が捗りますね。
{ "eventVersion": "1.05", "userIdentity": { "type": "IAMUser", "principalId": "AIDAQ3BIXXXXXXXXXXGDH", "arn": "arn:aws:iam::000000000000:user/Test-EIC-User", "accountId": "000000000000", "accessKeyId": "ASIAIMXXXXXXXXXXEKHA", "userName": "Test-EIC-User", "sessionContext": { "sessionIssuer": {}, "webIdFederationData": {}, "attributes": { "mfaAuthenticated": "false", "creationDate": "2020-05-19T15:26:48Z" } } }, "eventTime": "2020-05-19T16:26:36Z", "eventSource": "ec2-instance-connect.amazonaws.com", "eventName": "SendSSHPublicKey", "awsRegion": "ap-northeast-1", "sourceIPAddress": "XX.57.XX.181", "userAgent": "console.aws.amazon.com", "requestParameters": { "instanceId": "i-007b6efxxxxxxxx43", "osUser": "ec2-user", "SSHKey": { "publicKey": "ssh-rsa xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx" } }, "responseElements": null, "requestID": "axxxxxa9-2add-4524-a8f6-6axxxxxxxxxx", "eventID": "75xxxxxa-7c9b-4b4b-b60b-bf2xxxxxxxx6", "eventType": "AwsApiCall", "recipientAccountId": "000000000000" }
別のユーザーによる操作で、EC2インスタンスのProject
タグの値を、「Saitama
」に変更してみました。
この状態で再度同じようにEICによる接続を試みると、以下のような画面が表示されたまま、特に何も起こりません。
特にコンソール上でエラー等は表示されないのですが、CloudTrailでは以下のように記録されます。
{ "eventVersion": "1.05", "userIdentity": { "type": "IAMUser", "principalId": "AIDAQ3XXXXXXXXXXEBGDH", "arn": "arn:aws:iam::000000000000:user/Test-EIC-User", "accountId": "000000000000", "accessKeyId": "AXXXXXXXXXXZTTEFW5AA", "userName": "Test-EIC-User", "sessionContext": { "sessionIssuer": {}, "webIdFederationData": {}, "attributes": { "mfaAuthenticated": "false", "creationDate": "2020-05-19T15:26:48Z" } } }, "eventTime": "2020-05-19T16:27:07Z", "eventSource": "ec2-instance-connect.amazonaws.com", "eventName": "SendSSHPublicKey", "awsRegion": "ap-northeast-1", "sourceIPAddress": "54.240.2XX.60", "userAgent": "Coral/Jakarta", "errorCode": "AccessDenied", "errorMessage": "User: arn:aws:iam::000000000000:user/Test-EIC-User is not authorized to perform: ec2-instance-connect:SendSSHPublicKey on resource: arn:aws:ec2:ap-northeast-1:000000000000:instance/i-00xxxxxxxxxx17e43", "requestParameters": null, "responseElements": null, "requestID": "xxxxx9b5-1c3a-46d1-a9a5-8xxxxxxxxxxc", "eventID": "dxxxxx09-281b-454d-a876-xxxxxxxxxx6c", "eventType": "AwsApiCall", "recipientAccountId": "000000000000" }
こちらではどのOSユーザーに対して接続を試みたかまでは記録されないようですね。
ともかくこれでEICにおけるABACの確認ができました!
終わりに
EIC も ABAC も初めての概念だったのですが、どちらも便利そうですね。EICはブラウザから接続する際にはパブリックIPが必須になるので、そこが解消されたらより面白いなと感じました。
オリジナル・バージョンと併せて理解が深まれば何よりです。結局何事もオリジナルが一番だと思います。でもオルタナティヴっていう響きは好きです。